第25回応用経済時系列研究会・研究報告会




2008年6月21日(土)  10:30-17:00

立教大学 池袋キャンパス 12号館第1・2会議室
東京都豊島区西池袋3-34-1
(JR 山手線・埼京線・高崎線・東北本線・東武東上線・
西武池袋線・地下鉄丸ノ内線・有楽町線「池袋駅」下車。
西口より徒歩約7分。)


参加申し込み方法については別途こちらをご覧下さい

プログラム

午前の部 : 座長 西山 昇(クレディスイス投信) 報告35分,討論・質疑応答15分,計50分

10:30-11:20
「パネルデータによるデジタル家電の消費者購買分析」
柚木 孝裕(京都大学大学院経済学研究科 博士後期課程)
コメンテーター:小西 葉子((独)経済産業研究所)

11:20-12:10
「ハフモデルによる商圏分析」
笛田 薫*・前田 有美子・義籐 達彦(岡山大学),
植木 優夫(統計数理研究所)
コメンテーター:佐藤 忠彦(筑波大学大学院ビジネス科学研究科)

■ 12:10-13:10
昼食/理事会(立教大学・13号館会議室)

■ 13:10-13:30
総会 (立教大学・12号館第1・2会議室)




午後第1部  : 座長 笛田 薫(岡山大学大学院環境学研究科)

13:30-14:20
「日本の代表的な景気先行指数の比較分析」
山田 宏(広島大学大学院社会科学研究科),
永田 修一*(広島大学大学院社会科学研究科 博士後期課程),
本多 佑三(大阪大学大学院経済研究科)
コメンテーター:後藤 康雄(三菱総合研究所)

14:20-15:10
「株価変動の高周波成分におけるレジーム分析法の構築と実証分析」
松本 英高(株式会社かんぽ生命保険)
コメンテーター:川崎 能典 (統計数理研究所)


午後第2部 : 座長 阿竹 敬之(国際協力銀行)

15:20-16:10 
「クレジットスプレッド決定要因の実証分析〜構造モデルの説明変数は有効か?」
成田 俊介(筑波大学大学院博士課程/企業年金連合会)
コメンテーター:進藤 久佳(野村證券)
16:10-17:00 
「債務担保証券(CDO)の統計的解析」
安藤 雅和*(統計数理研究所),津田 博史(同志社大学),
田野倉 葉子(ラッセルインベストメント株式会社),
佐藤 整尚・北川 源四郎(統計数理研究所)
コメンテーター:鈴木 茂央(日興シティグループ証券)

記号*は,複数著者による発表での,実際の登壇者を意味します.




要旨

「パネルデータによるデジタル家電の消費者購買分析」
柚木 孝裕(京都大学大学院経済学研究科 博士後期課程)
パソコン、携帯電話、DVD/HDDレコーダーなど、近年の家庭電化製品には、各機器が単独で用いられるのと共に、各機器間を接続して用いる製品が多い。本研究では、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、ポータブルオーディオ、デジタルビデオカメラ、DVD/HDDレコーダー、薄型テレビ、というデジタル家電に対する消費者行動、特に買い揃え行動に着目した。
本研究では、2006年に実施したデジタル家電に関する購買行動の調査アンケートを下に分析した。本調査で各個人の、本調査では各個人の各家電購買履歴を、2000年から2006年までの7期パネルデータにした。家電のデジタル化による各家電間同士の接続が容易となった事から、各個人の購買行動に関し、「接続」を理由とする購買行動、特に各家電間の購買の引き金となる、核となる家電の存在を仮定した。
各個人の家電購買行動を、「デジタル家電群を買い揃えるまでの行動」とする事で、非説明変数を家電購買履歴、説明変数を他の家電購買履歴及び個人属性とする計量モデルの推定を行った。特に、購入=1、購入せず=0、とすることでCox(1972)の比例ハザードモデルによる推定を試みた。

「ハフモデルによる商圏分析」
笛田 薫*・前田 有美子・義籐 達彦(岡山大学),
植木 優夫(統計数理研究所)
本稿では、消費者の買い物出向率をハフモデルを用いて分析する。
ハフモデルとはHuff (1963)により提案された「消費者が、各商業集積へ買い物出向する確率は、商業集積の売場面積の規模に比例し、そこに到達する時間距離のべき乗に反比例する」というモデルであり、新規出店による集客及び他店舗への影響の推定に用いられる。
今回は数年おきに調査された「岡山県民の生活行動圏」データを用い、市町村を集計単位とした。分析の結果、ハフモデルにおける距離の指数、すなわち購買地選択において距離をどの程度重視するかというパラメータに関しては、食料品などの最寄品は距離を重視、レジャーなどは距離を軽視するという常識的な結果だけでなく、最近は距離を重視する傾向があることが分かった。また同一市町村間の移動に関しても最近は時間距離が増加していると見做しての購買地選択を行っていることが分かった。さらに、通産省修正ハフモデルにおいては距離の指数として2が指定されているが、仮説検定の結果この値を用いることは棄却された。

「日本の代表的な景気先行指数の比較分析」
山田 宏(広島大学大学院社会科学研究科),
永田 修一*(広島大学大学院社会科学研究科 博士後期課程),
本多 佑三(大阪大学大学院経済研究科)
本研究は、わが国における2つの代表的な景気先行指数について2つの手法を用いて比較分析を行ったものである。分析対象として選択した、OECDによるCLI(景気先行指数)と内閣府による先行CI(景気合成指数)は、どちらもわが国の景気の先行きを把握するためによく用いられる指数である。ここでは2つの景気先行指数を、景気転換点予測の資料として考えた場合のパフォーマンスについて、1973年4月から2007年1月までの月次データを使用し評価する。
本研究の特徴は、景気先行指数における転換点を特定するための手法として、Iacobucci and Noullez (2005)で提案されたフリークエンシー・セレクティブ・フィルタである
Hamming-Window(以下HW)フィルタを使用し景気循環成分を抽出する点である。我々は景気転換点の特定方法としてHWフィルタによる方法のほかに、Bry-Boschan(1973)で提案されたBry-Boschan 法による分析も行う。上述の2つの分析手法で得られた実証分析結果を統計的な指標で確認するため、Harding and Pagan(2002)によるCI(Concordance Index)を計算する。最後に得られた結果に対する要因を6ヶ月変動率の影響、構成系列の違いという2つ観点から考察する。

「株価変動の高周波成分におけるレジーム分析法の構築と実証分析」
松本 英高(株式会社かんぽ生命保険)
本稿では、ボラティリティや市場非効率性尺度が株価の上昇、下降、ランダムと定義されたレジームにどのように影響を与えるのか分析するフレームワークを構築して、分析結果を示した。具体的には、ウェーブレット解析によってトレンドを除いた日次の株価データがHamilton[1990]によって提案された。二つのレジームのMS-AR(1)過程から発生すると仮定して、各レジームになる事後確率とBollerslev[1986]の方法によって計測されたボラティリティ、伊藤/杉山[2007]の方法によって計測されたAR(1)の時変係数の推移との関係をプロビットモデルによって分析した。その結果、傾向として市場非効率性尺度は株価下降局面になる事後確率と相関し、ボラティリティは株価上昇局面になる事後確率と相関する傾向があることがわかった。
本稿は、市場が効率的であるか非効率的であるかどうかの議論において市場の非効率性の度合いが存在することを示唆した伊藤/杉山[2007]を利用した分析である。松本[2007]では、急激な株価変動の根本的な原因を市場の非効率性を前提にして、ボラティリティの瞬間的な変化が株価変動を大きくさせる要因であることを示唆した。しかし、ボラティリティと市場の非効率性の時変構造が株価変動にどのような影響を与えるのかを定量的な形で分析することができていない。そこで、本稿で市場非効率性の度合いやボラティリティの変化が株価の上昇局面、下降局面、ランダム局面と定義された局面にどのように影響を与えるのかを分析方法を構築することによって検証した。

「クレジットスプレッド決定要因の実証分析〜構造モデルの説明変数は有効か?」
成田 俊介(筑波大学大学院博士課程/企業年金連合会)
本研究では、1997年から2004年までの日本の社債市場において、社債の対国債スプレッド(以下、クレジット・スプレッド)決定要因を分析することが目的である。信用リスクを構成要因別に分解するために、信用リスクモデルの代表的なものとして、マートンの構造モデルを取り上げる。その説明変数の有効性について、パネルデータを用いた実証分析を行う。
本研究では、@構造モデルの説明変数は、線形モデル上でもクレジット・スプレッドに対して、高い説明力を持つ。Aクレジット・スプレッドは、負債比率や資産ボラティリティ、残存年数といった、企業の個別要因によって決定される。これらの仮説を実証的に分析する。
スプレッドと説明変数の挙動を明らかにするため、パネルデータ分析の手法を利用する。わが国の社債市場を対象として、クレジット・スプレッドの決定要因を分析した先行研究の大半は、説明要因にマクロ的な代理変数を利用したものである。ミクロ的(個別企業要因的)な視点からの検討は殆ど前例がない。本研究は,このギャップを埋めようとするものである。本研究では、証券会社の店頭時価を用いた精度の高い市場データ、および個別企業のバランスシートから取り出した財務データを用いて、企業を個社単位で分析することが特徴である。

「債務担保証券(CDO)の統計的解析」
安藤 雅和*(統計数理研究所),津田 博史(同志社大学),
田野倉 葉子(ラッセルインベストメント株式会社),
佐藤 整尚・北川 源四郎(統計数理研究所)
社債や貸出債権(ローン)などの原資産プールを担保として発行される証券化商品の一つに債務担保証券(CDO)がある。証券化商品の特徴である優先劣後構造と信用補完により、同一の原資産プールでありながら、投資家のニーズにあわせた異なるリスクとリターンをもつ債券が発行できるため、近年急速に取引が拡大した金融商品である。しかし、サブプライムローン問題のように、債権の信用リスクを適切に評価するのは難しく、信用不安といった金融ショックが世界中の金融市場に波及し現在も続いている。本研究は、Hull and White (2006)が提案したインプライド・コピュラアプローチを用いて、ハザード率シナリオの実現確率を市場データから求めるとともに、最近の金融ショックによるハザード率シナリオの構造の変化を探る。


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