第27回応用経済時系列研究会・研究報告会




2010年6月19日(土)  10:30-17:00

明治学院大学・白金キャンパス本館10階・大会議場
東京都港区白金台1-2-37
(東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線 白金台駅2番出口より 徒歩7分・
東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線 白金高輪駅1番出口より 徒歩7分・
都営地下鉄浅草線 高輪台駅A2出口より 徒歩7分)


参加申し込み方法については別途こちらをご覧下さい

プログラム

午前の部 : 座長 吉田 靖(千葉商科大学) 報告35分,討論・質疑応答15分,計50分

10:30-11:20
「商品先物の制度を考慮した価格変動モデル」
青木 義充((株)QUICK/総合研究大学院大学)
コメンテーター:荒木 浩介(東京工業品取引所)

11:20-12:10
「経済予測の特性分析」
飯塚 信夫(日本経済新聞デジタルメディア/日本経済研究センター)
コメンテーター:佐藤 整尚(統計数理研究所)
■ 12:10-13:10
昼食/理事会(明治学院大学・白金キャンパス本館8階・会議室)

■ 13:10-13:25
総会 (明治学院大学・白金キャンパス本館10階・大会議場)




午後第1部 : 座長 西山 昇(東京工業大学)

13:25-14:15
「A Full Bayesian Implementation of the Black-Litterman Approach」
中妻 照雄(慶應義塾大学経済学部)
コメンテーター:木村 哲(明治大学大学院グローバルビジネス研究科)

14:15-15:05
「外国人投資家の株式所有と企業価値の因果関係」
外木 好美(内閣府経済社会総合研究所景気統計部)
コメンテーター:神山 直樹(ドイツ証券)


午後第2部 : 座長 川崎 能典(統計数理研究所)

15:20-16:10 
「取引開始前および取引開始後の価格発見」
太田 亘(大阪大学大学院経済学研究科)
コメンテーター:大庭 昭彦(野村證券)
16:10-17:00 
「Portfolio optimization using spreads of pairs of stocks」
山田 雄二*(筑波大学大学院ビジネス科学研究科),
James A. Primbs (Management Science and Engineering, Stanford University)
コメンテーター:安達 哲也(新日本監査法人)

記号*は,複数著者による発表での,実際の登壇者を意味します.




要旨

「商品先物の制度を考慮した価格変動モデル」
青木 義充((株)QUICK/総合研究大学院大学)
東京工業品取引所(東工取)に上場されている商品先物のうち,金,銀,白金,パラジウム,アルミニウム,ゴム,原油,灯油,ガソリンの9商品を対象とした価格変動モデルを提案する.
商品先物市場では,対象商品の受給事情の変化や急激な先行き見通しの修正などの不確定的な事象によって相場が急激に変動することを防ぐため,1日における値動きについて,前日の価格に対し一定金額を加減した制限値段が定められている.さらに東工取では,毎月末に次の1ヶ月間の制限値段の幅を公表しているため,基本的に当該月間においては1日の値動きの上限が定数として与えられる.
従来までは価格変動モデルとして,収益率をベースとしたモデル化がなされてきた.しかしながら,収益率は価格の前日差を前日の価格で除するために,日々の変動の上限が時間に依存して変化する.そのため,収益率の従う確率分布は時点に依存した条件付確率分布として扱う必要が生じ,表現が複雑となる.そのため,本報告では価格の前日差をベースとしたモデル化を提案している.
一方,制限値段のために対象商品の価値に関する情報を観測できない場合が存在する.この前提の下では価格変動モデルは打切りのある回帰モデルの一種と考えられるため,価格変動モデルのパラメタ推定法としてマルコフ連鎖モンテカルロ法を利用したアルゴリズムを提案している.
得られた価格変動モデルと推定されたパラメタをもとに,証拠金取引の仕組みを考慮した,追証発生確率の算出法の導出も行なう.
「経済予測の特性分析」
飯塚 信夫(日本経済新聞デジタルメディア/日本経済研究センター)
2004年4月から開始されたESPフォーキャスト調査は、年度成長率をはじめとした主要指標について民間調査機関に対して毎月調査を実施している。経済予測の精度、予測形成に関する先行研究では、分析対象となる予測値が各年度について各機関で1つ、もしくは2つ程度しかないという制約があったが、ESPフォーキャストの登場でその制約が解消されつつある。
本稿ではESPフォーキャスト調査の個票データを用いて行った2種類の経済予測の特性分析結果を示す。第1は、毎月調査を実施しているという長所と調査開始からまだ日が浅いという欠点を両方考慮に入れた方法で、先行研究と同様に予測の同質性を検定する。第2は、予測を専門としないエコノミストに対してESPフォーキャスト調査と同時期に予測値を尋ね、両方の結果を比較する。
A Full Bayesian Implementation of the Black-Litterman Approach
中妻 照雄(慶應義塾大学経済学部)
The Black-Litterman approach for portfolio selection has been popular among practitioners of fund management. It is often referred to as a Bayesian approach in the sense that it combines the prior information or views of investors on the expected returns with the market equilibrium expected returns implied by the capital asset pricing theory. Although the Black-Litterman approach is Bayesian in a broad sense, it is not so in the conventional sense because it does not utilize the sample information and does not follows the Bayesian decision making procedure. In this study, I propose a full Bayesian portfolio selection method based on the Black-Litterman approach.
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「外国人投資家の株式所有と企業価値の因果関係1
外木 好美(内閣府経済社会総合研究所景気統計部)
1960年代から70年代にかけて形成された金融機関と企業の間の株式持ち合い,および事業会社同士の持ち合いが90年代に入って解消されるに伴い,金融機関と事業会社の持株比率は低下傾向にある。それに代わって日本企業の株式保有を増やしたのが外国人投資家である。株式の持ち合いにより株主からの規律付けを免れてきた日本の経営者が,外国人投資家の持株比率の上昇によって株主価値の向上を強く意識するようなったのかは,実証的に興味深い問題である。
Rigobon(2003)の分散不均一性による同時方程式の識別法を利用し,外資比率と企業価値の同時点の因果関係を検証した結果(岩壷・外木, 2007),企業価値が低くなると外資比率が上昇する一方で,外資比率が高くなるとその企業は企業価値が高まることが示された。加えて,パネル構造VAR(1)を推計し,ある時点での外資比率の変動ショックが持続的な企業価値の上昇をもたらすか検証した結果(岩壷・外木, 2010)2 ,企業価値上昇効果は,時間と共に小さくなりつつも持続していることが示された。以上の結果は,外国人投資家の投資能力の高さに加え,外国人投資家が一時的な企業価値の上昇による裁定利益を求める「ハゲタカ」ではなく,長期的に企業価値を上昇させる真の経営向上効果を持つことを示唆している。

1神戸大学・岩壷健太郎准教授との共同研究をまとめたものである。なお,すべて研究者個人の責任で執筆されており,内閣府経済社会総合研究所の見解を示すものではない。
2未定稿。第17回関西計量経済学研究会,景気循環研究会(白浜コンファレンス)報告論文。
「取引開始前および取引開始後の価格発見」
太田 亘(大阪大学大学院経済学研究科)
本稿では、Biais, Hillion, and Spatt (1999)のunbiasedness regressionにより、 東京証券取引所の取引開始前と取引時間中の価格形成の情報効率性について分析した.他の取引所と同様、東証の取引開始前の気配もノイズではなく新情報が反映しており、投資家は気配を通じた学習を行っていると考えられる.さらに価格変動が大きな日には、気配の改訂が頻繁であるほど、より効率的な気配の形成が行われている.一方、取引時間中は、板が厚いほど価格発見に遅れが発生していると考えられる.
「Portfolio optimization using spreads of pairs of stocks」
山田 雄二*(筑波大学大学院ビジネス科学研究科),
James A. Primbs (Management Science and Engineering, Stanford University)
It is fair to say that stock prices are believed to evolve according to a random walk and thus the prices of the stock market cannot be predicted. However, we may observe that there are pairs of stocks whose movements look similar, characterized as ``cointegration of pairs of stocks.'' In this work, we show how to search for cointegrated pairs of stocks and construct an optimal portfolio based on the cointegration. For finding cointegrated pairs, we use the daily stock price dataconsisting of Nikkei 225 in Japan. Then, we construct an optimal portfolio based on the following two techniques: (1) Mean-variance optimization and (2) Expected utility maximization in the terminalwealth. Since the mean-variance optimization considered here solves a single period problem only, we may refer to it as ``Myopic.'' On the other hand, the latter criteria can find dynamic optimal policy for arbitrarily long term, and thus, we may refer to it as ``Long term optimal portfolio'' or ``Optimal'' for short.


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